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平清盛はなぜ日本初の人工島築造を強行したのか? 兵庫の港大改修と福原遷都の彼方に夢見たものとは?

インバウンドから逃れたい! 「歴史&絶景」1日で巡れる関西の穴場【第2回】

■清盛にはじまる港の都

兵庫城跡に初代兵庫県庁は建った。復元された初代県庁は近くの兵庫津ミュージアムで見学できる。 撮影:本渡 章

 来迎寺から道はさらに南へ、運河に架かる築島橋を渡るとまもなく兵庫城跡。清盛の福原遷都の夢はかなわなかったが、大輪田泊は鎌倉時代には国内第一の港に成長し、室町時代には足利義満による日明貿易の拠点となった。江戸時代には西廻り航路の要津として栄え、明治の開港を経て、現在は神戸市の湾岸に連なる巨大インフラとなった神戸港の一角を占める。兵庫城は織田信長に兵庫の地を与えられた池田恒興(いけだつねおき)が兵庫津(兵庫港)に築いた。城郭は残されず、今は城跡を示す案内板が立つのみ。

 

 城跡の近くに2022年にグランドオープンした兵庫津ミュージアムは、兵庫と港の歴史をわかりやすく教えてくれる。併設のカフェでは初代兵庫県知事・伊藤博文の好物だったビーフシチューが食べられる。

兵庫津ミュージアムのカフェで足を休めて珈琲タイム兵庫津ミュージアムのカフェで足を休めて珈琲タイム。右の写真は住吉神社の境内にて。鎌倉時代建立の十三重石塔(清盛塚)は堂々たる県の指定文化財。平清盛の像、琵琶塚も小さく見える。撮影:本渡 章

 港の風を感じつつ住吉神社へ向かう。境内には平清盛の銅像をはさんで、弘安9年(1286)と建立年が記された清盛供養のための十三重石塔、琵琶の名手で清盛の甥の平経正(つねまさ)の墓とされる琵琶塚が並んで建つ。像は昭和43年(1968)に神戸開港100年記念に地元有志が建立。兵庫と港の歴史は平清盛に始まる。住吉神社の神は言うまでもなく海の神、航海の神であり、戦の神。港都と呼ばれる兵庫から清盛像は今も歴史の行く末を見据えている。

 

 住吉神社から清盛橋を渡り、和田岬桟橋へ。目の前に現在の兵庫港が広がる。散策の終わり、余韻を胸に地下鉄海岸線和田岬駅に向かう。

 

 

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本渡 章ほんど あきら

1952年生まれ。作家・古地図コレクター。1996年、第3回パスカル短篇文学新人賞優秀賞受賞。著書に『図典「摂津名所図会」を読む』『図典「大和名所図会を読む』『古地図が語る大災害』『カラー版・大阪古地図むかし案内』『京都名所むかし案内』(以上、創元社)、『鳥観図!』『大阪古地図パラダイス』『古地図で歩く大阪ザ・ベスト10』(以上、140B)など。他に編著『超短編アンソロジー』(ちくま文庫)、共著『飛翔への夢』(集英社)など。

 

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